第10章 初夜
「すずらん、部屋に帰ってから全然笑ってなかったから…」
わたしは自分のことだけで精一杯で、カカシが心配してくれてることなんて、ちっとも気付いてなかった。
ごめん。と言いかけたとき、カカシに椅子越しに後ろから抱きしめられる。
「無理に今日しなきゃ、って思わなくていいよ。
すずらんが大丈夫って思えるまで、オレは待つから」
胸の下あたりに回っていたカカシの手を握る。
「違うの。
したくないんじゃなくて、その。
初めてだから、どんな顔していいか、とか色々わかんなくて、考えすぎちゃって…。
自分ばっかりドキドキしてるのも、恥ずかしくて……」
「オレもドキドキしてるよ」
「ほんと?」
思わずカカシの方に振り向くと、カカシが照れ臭そうに笑う。
「うん。好きな子と二人きりで同じ部屋にいたら、そりゃドキドキするよ」
おいで、とカカシがわたしの手を引いて立たせると、わたしの耳がカカシの胸に当たるように抱きしめる。
確かに、カカシの鼓動もいつもより早い。
カカシが髪をすくように、わたしの頭を優しく撫でてくれる。
背に手を回して、カカシにギュッと抱きつく。
「すずらん?」
少し戸惑った声で、カカシがわたしの名前を呼ぶ。
「カカシ、大好き」
カカシを真っ直ぐ見つめて、背伸びをしてカカシに口付ける。
すぐに離れた唇を追うように、カカシの顔が下りてきて、もう一度唇が重なる。
カカシの手がわたしの腰に回り、ギュッと抱き寄せられる。
「すずらん、愛してる」
熱のこもった目で見つめられ、ドキドキする。
またカカシのキスが降ってきて、足をもつれさせながら、ベットの上に倒れ込む。
カカシが手で体を支えながら、重くないようにわたしの上に覆いかぶさる。
静寂の中に、2人のキスをする微かな音と、吐息だけが響く。
深くなるキスに、頭が痺れてだんだん何も考えられなくなっていく。
「…すずらん、続き、してもいい?」
顔を少し離して、カカシが聞く。
その顔が色っぽくて、クラクラする。
コクリとうなずき、カカシの首に手を回してカカシの頭をギュッと抱き寄せた。
「わたしもカカシにもっと触れたい…」
カカシがビックリした顔でわたしを見る。
「もー、あんまり煽んないで。
優しくできなくなるでしょ」
「あっ煽ってなんかないよ!」