• テキストサイズ

きみを想う

第9章 正月


「はいはい。
ゴメンね。ビックリでしょ。
毎年こうなの」

娘のつれない態度に文句を言うイッシンを見て、すずらんが困ったように笑う。

「今年はお兄様が、お嫁さんがもういつ赤ちゃんが生まれてもおかしくないからって来れなくなって。
だからカカシが来るの、すっごい喜んでたんだよ」

「そうなんだ。
オレもそんなふうに思ってもらえて嬉しい」

「よかった」と、すずらんが嬉しそうに微笑むと、近くにあった座布団に座る。

「カカシもお腹空いてる?
ごはん食べよ!」

とお皿や箸を取ってくれる。
オレもすずらんの隣に腰掛ける。

すずらんがオレに冷酒を注いでくれる。

「ありがと。
すずらんも、飲む?」

「うん。せっかくだし飲もうかな」

ついであげると、チビ、と舐めるように一口飲む。

「ん、おいしい!」

「うん。これ、おいしいね」


しばらく穏やかに飲んで、食べてしていたのだが、ふっと横を見ると、すずらんが揺れている。

まだコップ1杯も飲んでないのに、顔が真っ赤だ。

親子揃って弱いらしい。

「すずらん、後はお茶にしとけば」

と、冷たいお茶を差し出す。

「ん、ありがと〜」

そう言いながら、またお酒を飲む。

パッとお酒をとりあげると、

「あっダメー」

と取り返そうとしてくる。

「もうやめときなさい」

すずらんのコップの残りを飲み干してしまう。

「あー、カカシの意地悪〜」

そう言って、すずらんがオレに抱きつく。

「でも、好きー」

ぎゅうっと抱きついて、頬擦りしてくる。
なんだ、この可愛い酔っぱらいは。


宴会は夜遅くまで続き、屋敷で働いている人たちは、ほとんどがそれぞれの家に帰っていった。

ベロンベロンなってしまったイッシンは、男数人によって部屋に運び込まれ、同じくベロンベロンになって寝てしまったすずらんを、おぶって部屋に運ぶ。

部屋のドアを開けると、布団が2組敷かれてて、ドキリとしてしまう。
間違いなく、オレがここで寝ろってことだよな……。

とりあえずすずらんを布団に寝かせる。
邪魔そうだった髪飾りを取ってやると、「ん…、カカシ…好き…」と寝言を言って、ヘラ、と笑う。

あ。ダメかも……。

頬に手を添えて、すずらんにキスをする。
/ 105ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp