第8章 別れ、そして…
どうやって病室に帰ってきたのか分からない。
気づくとベットで寝ていた。
カーテンが少し空いた窓は薄暗く、今が夕方だとわかる。
ボンヤリして頭が働かない。
下を向くと、涙がこぼれてきた。
「…っ、ふっ……」
涙があとからあとから溢れてきて、止まらなくなる。
そのとき、コンコンっと部屋をノックする音が聞こえる。
慌てて涙を拭い、「はい!」と返事をする。
「大丈夫?」と姿を現したのは先生だった。
一瞬でもカカシかもしれないと、思ってしまった自分に悲しくなる。
「屋上で倒れてしまったみたいだね。
気分は悪くないかい?」
「大丈夫です」
少し診察してから、「うん。大丈夫そうだね。
念のため、退院は1日ずらそう。
家には連絡しといたから、今夜はゆっくり休みなさい」
そう言うと、先生は部屋を出ていった。
夕飯は味がしなかった。
体のために眠りたいのに、カカシの言葉が何度も頭の中を行き来して、結局あまり眠れないまま朝を迎えてしまった。
ボーッと働かない頭で、ただ外を眺めていた。
朝にシマとお姉さまが来てくれたけど、何を話したのかも思い出せない。
ただ、泣かないのに必死だった。
昼ごはんを食べ、しばらくすると、コンコンとドアを叩く音がした。
「はい。」
と返事をすると、車椅子の、すごく変な髪型で、すごく太い眉毛の人が入ってきた。
容姿のすごい知らない人にビビっていると、「すずらんさんだね。初めまして。カカシの永遠のライバルの、マイト・ガイと言います」
と、歯を輝かせて挨拶した。
カカシという名に、胸がチクリと痛む。
「あの、何の用でしょうか」
恐る恐る尋ねる。
「あなたと少し話がしたくてね」
その外見からは想像がつかない優しい笑顔に、少し警戒を解く。
「……話?」
「うん。昨日、カカシと飲んだんだが、今まで見たことがないくらい酔っ払って荒れていた。
あなたと別れてきたって。
理由を聞いても答えない。
あいつらしいけど。
それで心配になってね」
カカシと仲がいいんだ。
「君の顔を見て、確信したよ。
カカシが君を振ったんだね」
「……はい。好きな人が他にできたからって……」