第1章 お見合い
「ご足労いたみいる。6代目火影殿。
改めて挨拶する。
火の国大名の、千月『せんづき』イッシンと申す。
先程は娘が失礼した」
上背のある美丈夫、という出立のイッシンは、身分としては上なのに、礼儀正しい人物だった。
「6代目火影のはたけカカシです。
いえ、元気のよいお嬢さんですね」
「これから見合いをする相手に言うことではないのだが、正直跳ねっ返りで困っておってな。
末っ子だからと甘やかし過ぎたか」
苦笑しながらイッシンが言う。
確かに、見合いを成功させたいなら、もう少し言い訳をしてもよいだろう。
馬鹿正直なこの男に同じくバカ正直なナルトを重ねてしまい、ふ、と笑う。
「確かに。
しかし今の時代、女性もあれぐらい元気があった方がいいでしょう」
イッシンは予想外の言葉だったのだろう。
ビックリした顔をしていたが、すぐにニッと笑い、
「そう言って頂けるとありがたい。
さ、中に入ろう。
今日は暑い。茶を持たせよう」と大股で店へと入って行く。
イッシンは娘に会いに、部屋を出ていた。
店の中で冷たい茶を飲み涼んでいると、すずらんが髪を直しイッシンと共にやってきた。
入り口で座ると、「6代目火影様、先程はお見苦しい所をお見せして、申し訳ありませんでした」と深く頭を下げた。
流石は大名の娘だけあって、所作が美しい。
「気にしていませんので、頭を上げてください」
「ありがとうございます」
先程とは打って変わって大人しくなってしまったすずらんに、よっぽど父親に絞られたかと心の中で苦笑する。
イッシンと共にすずらんが座ったのを見計らって、豪勢な食事が運ばれてくる。
見合いの間中、すずらんはほとんど下を向き、質問されたことにだけ短く答えた。
その度にイッシンが眉を釣り上げていたが、素知らぬふりをしている。