第5章 樹上の逢瀬
オレの胸に耳を押し当てながら、すずらんが少し掠れた声で囁く。
いつもより薄い布越しに、すずらんの少し高い体温が伝わってくる。
堪らなくなって、グイと顎を持ち上げると柔らかなその唇に口づける。
背中に回されていたすずらんの手が、ギュッとオレの服を掴む。
何度も角度を変えて口づけると、すずらんの息が上がってくる。
少し開いた口に舌を差し入れると、戸惑ったようにすずらんの身体がビクリと跳ねた。
ギュッと目を閉じてはいるものの、拒絶されないのを確認してから、舌を絡めたり上顎を舐めたりしていると、すずらんの身体から力が抜けカクッと膝が折れる。
崩れ落ちないように抱きとめ木の幹にそっと背中を預けさせると、顔の横に手をついて、もう一度深く口づける。
唇を離す頃には、2人ともすっかり息があがってしまっていた。
潤んだ瞳と濡れた唇が扇情的で、もっと奪いたくなるがぐっと堪える。
ちゅ、と優しくおでこに口づける。
「カカシ……?」
見上げてくるすずらんの頭を撫でてもう一度抱きしめると、すずらんも身体を寄せてくる。
すっぽりと腕の中にすずらんを収めて、いい匂いのする髪に顔を埋める。
「簡単に男の人部屋にあげたりしちゃ、ダメだからね。
あと、男の部屋に上がるのも」
「カカシも?」
「そ、オレも。襲うよ」
わざと耳を甘く噛む。
「っ!」
すずらんがビクリと震える。
耳が弱いらしい。
「カカシになら襲われてもいいよ」
不意打ちの予想外のセリフに、思わずこっちが赤面してしまう。
「……っ。そういうこと言わないで。
ほんとうに我慢できなくなるから。」
まだ何か言おうとするすずらんの口を唇で塞ぐ。
「んっ……、は…っ」
色っぽいすずらんの吐息ごと飲み込むように口づけて、強くすずらんの身体を抱きしめる。
「大事にしたいの」
少し離した唇でそう囁くと、頬に小さな口づけを送って身体を離す。
「さ、そろそろ帰ろう。
寝なくちゃね」
再びすずらんを抱き抱え、来た道を戻る。
夏の夜風が火照った身体を程よく冷ましてくれる。
窓を開けすずらんを部屋に下ろすと、両手でオレの顔を包みすずらんがオレにキスをする。