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きみを想う

第4章 花火


 しばらく暗い通りを歩いて行くと、少しひらけた場所に出た。
屋台の出ていた場所からは少し遠いからか、ここら辺は人通りもまばらで静かだ。
そのまま一つの建物に入り、階段を登って行く。

「結構上りますけど大丈夫ですか?」

「はい」

手を繋いだままだから緊張してしまう。

トントン、と階段を上る音だけが狭い階段に響く。


しばらく行くと、急に視界が開け建物の屋上に着く。
湿り気を帯びた夏の風が頬を撫でて行く。

「こっちです」

と、手を引かれるままに付いていくと、シートが敷かれ食べ物と飲み物が置かれていた。

「まだ少し花火まで時間があるから、ここで座って待ちましょう。
お腹、空いてますか?」

そういえば、早めにお昼ご飯を食べて、それきりだった。

「はい!」

そう答えると、タイミングよくわたしのお腹が鳴る。

「っぷ」

吹き出す火影様に顔が熱くなるのを感じる。
恥ずかしくて、「今日はお昼が早かったんですっ!!」
と聞かれてもいないのに、言い訳してしまう。
するとおかしそうに火影様が笑う。

「じゃあよかった。食べましょう」

そう言って靴を脱いでシートの上に上がる。
その拍子に繋いでいた手が解けてしまい、寂しさを感じてしまう。

シートの上には、屋台で売られていたたこ焼きや焼きそば、焼き鳥など、たくさんの食べ物が置かれていた。

普段なかなか食べない物たちにテンションが上がり、空腹も手伝ってパクパクと食べる。
火影様はそんなわたしを嬉しそうに見ている。

 不意に火影様の手が伸びてきて、わたしの口の端に「ソースついてますよ」と、親指で触れる。
そして、親指についたソースをペロリと舐めとる。

「……っ!」

触れられた唇が、痺れている。
また顔が赤くなってしまうのを感じる。

「っ今日の火影様、変です!」

いつもよりも距離が近くて落ち着かない。
火影様の顔を見れなくて、下を向く。

「すいません。
困らせたなら謝ります。
でも、あなたがあまりに可愛いからつい」

甘い言葉に本当にどうしていいかわからなくなる。

「もう何もしませんから、顔をあげてください」

困ったみたいに言うからソロリと顔を上げると、火影様がすごくかっこいい顔で微笑んでいる。
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