第4章 花火
ブラブラと屋台を見ながら歩いていると、ドンっと人にぶつかってしまう。
「すいませんっ」
慌てて謝ると、ガシッと手首を掴まれる。
ガラの悪そうな2人組がニヤニヤしながらわたしを見下ろす。
「痛ってぇなぁ。
腕、折れちゃったかも。
お姉ちゃん、あっちで看病してよ」
そう言って、わたしを路地裏へ引っ張って行こうとする。
この前の誘拐されたときのことを思い出し、血の気が引いてしまい、声が出ない。
「やっ…!!」
やっとこれだけ言って掴まれた手首を離そうともがくが、ビクともしない。
怖いっ助けて!!
思わず目を瞑ったとき、グイッと肩を引き寄せられる。
「おい、その子を離せ」
聞き覚えのある声が耳に届きパッと見上げると、そこには火影様がいた。
「火影さまっ!」
火影様はわたしを捕まえていた男の手を取ると、グイッと捻り上げ、さらにわたしを自身の胸へ抱き寄せた。
「うあっ、いててて!
なにすっ、てめ!!」
「おい!まずいよ、あの人!
火影だっ!」
なびいていた火影様のマントに気づき、2人は慌ててその場を立ち去った。
「あ、しまった。
マント、つけたまま来ちゃった……」
火影様はそう言うと、優しい目でわたしを見下ろした。
「とりあえず、人が集まっちゃったから、別のとこ行きますね」
次の瞬間視界が揺れて、体が重くなったかと思うと全然違う場所に立っていた。
人気のない裏通りだろうか。
火影様がビックリしているわたしから、そっと体を離す。
「怪我はないですか?」
その声でハッと我に帰る。
「はい!助けていただいて、ありがとうございました」
「大丈夫です。
でも、ちょっと目を引くぐらい綺麗なんだから、もうちょっと自覚を持ってください」
「えっ!?」
顔が一気に赤くなる。
どう返せばいいか分からなくなっていると、火影様が顔を近づけて、耳元で、「今日の浴衣、すごく似合ってます。」と呟く。
そして大きくて温かい手で、わたしの手をとり歩き出す。
いつもと様子の違う火影様にドキドキが止まらない。
やっと小さな声で
「ありがとうございます」と告げると、前を歩いていた火影様が振り向き、いつもの優しい顔で微笑む。