第4章 花火
夜、お風呂を上がり、部屋の窓を開けて風に当たって火照った体を沈める。
お父様がソウマのことを知っていたなんてビックリした。
わかってて今まで黙ってくれてたんだな。
本当にわたしは心配かけてばっかだな……。
ソウマに赤ちゃんができたことを聞いたのにそこまでショックじゃなかった自分に、自分が一番驚いている。
わたし、現金だなぁ。
今はそれよりも花火大会の事が頭を占めていた。
水色の、あのお気に入りの浴衣で行こう。
髪型はどうしようかな。
浴衣姿、褒めてくれるかな。
考えるだけで頬が熱くなる。
楽しみだな。
カレンダーの前に行き、花火大会の日を指でなぞる。
いい天気になりますように。
暗い空には、見守るように、優しい光のお月様が輝いていた。
花火大会当日、朝からずっとソワソワが止まらない。
お昼ご飯を食べて、まだ早いと言われたけどじっとしていられなくてシャワーを浴びて汗を流す。
髪を結い上げてもらい、浴衣を着付けてもらう。
いつもはしないけど、艶々した紅もさしてもらう。
「お似合いですよ、お嬢様」
いつも世話を焼いてくれるシマが、ニコニコと笑う。
「へへ、ありがとう。
あっ!シマ。この前はお粥教えてくれてありがとう。
すごく喜んでくれたんだよ!」
「そうですか。
それはよかったです」
シマは小さい頃に病気で死んでしまった母の代わりに、ずっとわたしや兄弟の世話をしてくれていて、悩みなどもいつも聞いてくれる大切な人だ。
この前のお粥もシマが教えてくれたのだ。
「お嬢様が幸せそうで、わたしも嬉しいですよ。
さ、もう今からはいつもみたいに屋根に登ったり、走り回ったりしないで下さいよ」
「もう、子供じゃないから大丈夫だよ!」
「どうだか」
クスクスとシマが笑う。
「下駄も玄関に出しておきますね」
「ありがとう」
荷物を用意して、少し早いけどじっとしていられないから、もう家を出ることにする。
馬車で木の葉の里の門の前までおくってもらい、まだ少し待ち合わせ時間まで時間があったから、里の中をブラブラ歩くことにする。
今日は花火大会だからかすごく人が多くて、屋台なんかもたくさん出ていた。