第4章 花火
この間のお礼に菓子を持ってきてくれた火影様とお父様、わたしの3人で客間のテーブルを囲んでしばらく話をしていたが、お父様が仕事の電話で部屋を出て行ってしまう。
何故か緊張してしまう。
何か話題をと探していると、火影様から話しかけてくれた。
「そう言えば、行きたい場所は決まりましたか?」
この間のお礼のことを言っているのだろう。
「いえ、それがまだ……」
いっぱい考えたのだが、考えすぎて分からなくなっていたのだ。
「そうですか。
実は今度、木の葉の里で花火大会があるんです。
よければ一緒に見ませんか?」
そう言って、折り畳まれたチラシを開く。
チラシには色とりどりの大きな花火が描かれていた。
「行きたいです!
花火、大好きです!」
「それはよかった。
特等席を用意しときますよ」
火影様がニコリと笑う。
待ち合わせの時間や場所を決めていると、お父様が帰ってきた。
「では、そろそろ失礼させていただきます」
しばらく話した後、火影様が立ち上がる。
もっとゆっくりしていけと言うお父様に、仕事がありますので、と断り、もう一度礼を言い火影様が帰ってしまう。
お見送りに来た門の前で、もう少し一緒にいたかったなと考えていると、「火影殿は本当に気持ちのいい男だな」とお父様が呟く。
「そうですね」
答えるとガシッと肩を掴まれ
「じゃあなんでお見合いのとき、あんな態度をとったんだぁー!」とガシガシ揺さぶられる。
「わわわわわっ。だってあのときはまだ、そんな人なんて知らなかったしっ」
さすがに想う人がいることは、お父様には言ってなかった。
「あんなに優しくて、お前みたいな奴を受け入れてくれる心の広い男はなかなかおらんぞ!!」
「失礼な……」
「ワシは心配しとるんだ!
いつまでも、結婚してしまった男を見ていてどうする!!」
「っ!!どっどうして知って……」
「阿呆。丸わかりだ。
あれだけあからさまなら誰でも気付くわ!」
「……」
「嫁の腹に、赤子ができたそうだぞ」
お父様の顔をパッと見る。
「もう諦めて前に進め。
ワシはお前に幸せになってほしい」
お父様がそっとわたしの頭を撫でる。
「お父様……。
ありがとうございます」