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きみを想う

第2章 誘拐


「きゃっ!!」

火影様が勢いよく飛んで、近くにあった木に飛び乗る。

「すみません。
これが一番早いので、怖かったら目を閉じていて下さい」

そう言ってすごい速さでどんどん木を飛び移って行く。

「……すごく、身軽ですね」

「忍ですから」

そっか。火影様だもの。
きっとすごい忍なんだよね。

「わたしもやってみたいです」

「ふふ、高い所好きですもんね」

この前のお見合いのことを言われてるとわかって顔が赤くなる。

「火影様って結構、意地悪ですよね……」

「ばれましたか」

火影様が、口布の下で笑う。

男の人なのに綺麗な顔立ちだな。
お見合いのときは下ばかり向いてほとんど見ていなかったけど、料理食べてるときの口布の下、すごくかっこよかった。
なんでいつも口布してるのかな……。

雨に濡れて垂れていた白銀色の前髪からわたしの鼻に滴がポタリと垂れて、ハッと我に返る。

わたし火影様のことばかり考えてる!!

考えを跳ね除けるようにフルフルと頭をふると、こちらを見た火影様と目が合い、顔が赤くなってしまい思わず顔を背ける。

「その頬、腫れてしまいそうですね」

「しばらくお見合いしなくていいからよかったです!」

すっかり忘れてた叩かれた頬を手でさする。

「女の子なんだから、無茶しないでください。
男の指も、噛んだでしょ。
倒したときに真新しい歯形が見えました。
捕まったときは、俺が助けに行くまで大人しくしてて下さい」

「え?」

思いがけない言葉にドキリとしてしまう。

「お見合いは破談になりましたが、わたしは貴方がた親子のまっすぐ素直なところ、俺みたいな身分のものが言うのは失礼かもしれませんが、気に入ってるんです」

「そんな、失礼だなんて……。
ありがとうございます」

そうだよね。人として気に入ってくれてるんだよね。
何をわたしはドキドキしているんだろう。
あまりに緊張していたからちょっと気が動転してるんだ。

そこで、急に助けてもらったお礼をちゃんと言えてなかったことに気づく。

「あのっ!」

ん?と火影様が優しい灰色の目でわたしを見る。

「助けていただいて、ありがとうございました。
気が動転していて、お礼がすっかり遅くなってしまいすみません」

「いえ、無事でよかったです」


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