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きみを想う

第2章 誘拐


そのときーーー

「何モンだ!!」

男たちのどよめきが聞こえハッと顔を上げる。

「お前らに名乗る名なんてないよ」

ガタ、と倒れていた椅子がわたしごと戻され、パラリと縄が解かれる。

「っ火影様!?」

「大丈夫ですか?助けに来ました」

ニコリと笑って火影様がわたしを庇うように男たちの前に立つ。

「……っ、外の見張りはどうした!!」

「全員倒させてもらったよ。
あとはあんたらだけ。
大人しく捕まるってんなら助けてやろうと思ったけど、女の子に手をあげるような奴に容赦なんていらないよな」

火影様の気迫に男たちがたじろぐ。
その隙に、火影様が目にも止まらぬ速さで男たちに近づくと、次の瞬間には3人の男たちが床に倒れていた。

「はー。いっちょ上がり」

コキっと首をならして、呆然と椅子に座っていたわたしの方に火影様がくる。
面をつけた人たちが入ってきて男たちに慣れた手つきで縄をかけると、担いで小屋を出て行く。

その背中に火影様が、「そいつら始末したら、里と大名の屋敷に無事保護したこと伝えといて」と言う。

「はい!」

声とともに仮面の人たちが消えてしまう。

それを見送ってからくるりとわたしに向き直ると、「遅くなってしまい、申し訳ありません。雨のせいで追跡が難航してしまって……」と、わたしに手を差し出す。

「立てますか?」

立ち上がろうとしたが、長い時間縛られていたせいか痺れていて、足元がふらついてしまう。

「無理しないで」と、前みたいに抱き上げられる。

「わっ!!大丈夫ですから下ろしてください!!」
慌てて降りようともがくけど、さっきより強い力でぐっと抱かれる。

「縛られていたからまだ痺れてるんでしょう。
大人しく抱かれてて下さい。
みんな心配しています、帰りましょう」

笑顔で言われ、その通りなので力を抜いて大人しく従う。

「まだ雨が降っていますから」

そう言うと、小屋を出る前に火影様が外套を脱いでわたしに頭からかけてくれた。
外套は火影様の温もりが残っていてドキドキしてしまう。

「あっあの、でもこれじゃ火影様が濡れてしまいます」

「わたしは大丈夫です。
風邪をひいてはいけないので着ていて下さい」

ニコリと笑ってそう言うと、火影様はわたしが何か言う前に小屋の外に飛び出した。
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