第2章 誘拐
ニコリと火影様が微笑む。
「さぁ、森を抜けたらすぐ屋敷が見えてきますよ」
言葉通り、ザザッとっ葉の間を抜けると急に視界が開け、見慣れた屋敷が遠くに見えた。
いつの間にか雨も上がり、雲間から綺麗な満月が見えた。
トン、トン、と今度は人家の屋根の上を器用に跳びながら、屋敷へと近づいていく。
門の前まで辿り着いた所で、スト、と地面に下ろされる。
「もう、痺れも取れましたか?」
3歩くらい歩いてみて普通に歩けることを確認してから、はい、とうなずく。
「よかった。
さ、お父上が心配しています。
早く帰って、安心させてあげて下さい」
「火影様は?」
「わたしは里に帰ってやらなければいけないことがあるので、今夜は失礼します。
今回の子細の報告は、里よりまた改めてさせていただきます」
まだ少し一緒にいたい気もしたが、疲れもあったのでうなずいて、
「ありがとうございました。気をつけて帰ってください」
とお礼を言い、門を開けて家の中に入る。
扉を閉める前に振り返ると、火影様はもう闇夜に消えていた。