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【アクナイ】滑稽でも君が好き【短編】

第2章 拝啓、ロボットさんへ【イグゼキュター】



その目は、ドクターの方をゆっくり見ると、緊張でかさついた唇がそのままここでは出るはずのない名前を紡いだ。


「さくらさんが…この戦場にいるそうです…」

「は…?」

「空輸班の方が…ランセットさんの整備係と思って一緒にコンテナに…」

「人間をコンテナに入れたまま飛ぶのはどこの馬鹿だクソッ…!!だから東を目指してるのか…!!そりゃあ配置がバラバラで、しかも何かを守るような動きをしたら嫌でもロドスの痛手になるってわかるもんなあ…!!」

「お、落ち着いて下さいドクター!」


連日の作戦続きで冷静さが失われ、乱暴な言葉に変わりつつあるドクターをアーミヤが抑える。
彼がこうなれば休ませるしかない、とわかっているのだが、今ここで休ませるわけにはいかない。

アーミヤが考えうる行動は、東側に勢力を傾かせる指示を出すことだった。だが、北は一番レユニオンの勢力が強く、防衛戦を行っているため不可能。
西や南は距離があり、到着には時間がかかるだろう。

ならどうすれば―――とアーミヤが瞼の裏にさくらの顔を浮かべた、その時だった。


「<敵、沈黙を確認。殲滅しました。次の指示を>」


無感情の声が二人のインカムに届いた。

見開いた青の目。すぐにインカムに手をやると、まるで噛みつくようにマイクに向かって言い放った。


「イグゼキュター!最優先で指定した座標に迎え!!手違いでそこにさくらがいる!!彼女を保護、私の下へ連れてくるんだ!」


焦ったドクターの声とは裏腹に、繋いだ回線の向こう側のイグゼキュターは数秒沈黙した。
その様子にアーミヤは目を見開く。


「(いつもは即答する方なのに…)」

「おい、イグゼキュター!聞こえているか!?」

「(動揺、してる?)」


アーミヤが向こう側を知ろうと、インカムに手を当てて音を拾おうと耳を澄ませる。

―――少し、ほんの僅かにコクン、という音が聞こえた。


「<任務了解。指定された座標へ移動します>」


ブツ、と一方的に切られた回線にドクターは次に他のオペレーターへの通信を始める。

その横でアーミヤはそっと東の方向を見据え、両手を胸の前で汲み、まるで無事を祈るように、天へと頭を垂れた。

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