第2章 拝啓、ロボットさんへ【イグゼキュター】
それから数時間後。
「うわっ!?」
何の予兆もなしにバッ、と上半身を起こして眠りから這い上がって来たイグゼキュターに、自分でもびっくりするぐらい肩が上がった。
「お、おはようございます」
「…私、寝ていましたか?」
「は、はい」
「…私が…?」
「いやそういうもんでしょ。人間なんだし…」
「…睡眠薬でも盛りましたか?」
「急に失礼だな!?盛ってませんよ!!」
しかし、昨日あれだけ質問した時以外喋らなかった人物が、初めて取り乱した所を見ると気分が良い。
軽く口角を上げていると、まだ何かブツブツと言っている。
「…何でそんな驚いてるんですか。寝るって普通の事でしょう」
「いえ、あり得ません。任務遂行中に居眠りなどあってはならないのです」
「うーん…任務中でも休憩って必要だと思いますが」
「…やはり何か盛りましたか」
「そんなに疑わしいかな!?」
疑いの目が痛い。しかし何もしてない事には変わりない。まごうことなく、自分は何もしていないのだから。
「まだ時間は経っていませんから、もう一眠りしても「いえ、もう二度としません」堂々と二度と寝ない宣言するのやめて!?」
フー、と長い息を吐き、本を机に置いて立ち上がる。
ベッド脇に足を下ろして座ったところの彼の前まで来ては顔を上げた時の、まだ眠そうな水色の目をジ、と凝視した。
まだ眠いなら寝ろ、と言うことも出来たが、彼は頑なに拒否するだろう。その言葉を飲み込んでおいた。
「では準備して下さい。ドクターの所に行きます」
「了解。指示に従います」
どこかデジャヴを感じる返答で、脳裏に白黒の天使がクロスボウを持ちながらピースしている姿が思い浮かんだ。サンクタ男子はみんなこうなのか…
げっそりしていると、目の前に私がいるというのに着替え始めたイグゼキュターに、私が盛大な悲鳴を上げるまで後数秒―――