第42章 モデル
女子の好意をピシャリと跳ねた牛垣くんだったが、すぐ彼女たちの複雑な心境をフォローして名前を呼び「なにか欲しいものあるの?」と聞き返すことをしている。
会話をすぐ切らない。
完璧だけじゃなく牛垣くんはさり気なく優しい所をみせる。
(これが"たらし"って奴なのか…)
何気ない言葉で救われる。
何気ない仕草で惹かれる。
何気ない優しさに恋に落ちる。
女子たちは一瞬落ち込んだような表情を見せたが、自分に興味を持ってもらおうと一生懸命に話しており、牛垣くんがイイ反応するたびに頬を染めている。
牛垣くんは心もイケメンだからさぞモテる。
それを目にした瞬間だった。
どの教科も最初は自己紹介からはじまる。
全員名前と顔が一致した訳ではないが、よく名前を呼ばれたりする子は何となく覚えてきた。
牛垣武明くんと竹岡竹蔵くん。
屋上に座るこの二人は特にそうだった。
「中学んとき屋上禁止だったから夢叶ったかも」
「ぶはっ!牛垣の夢、屋上で飯食うことだったの!?」
「え、だめ?俺なんかヘンなこと言った?」
「いやいや全然。俺も屋上行けるっつーからこの高校選んで」
「今それ絶対作っただろ」
屋上では三人の同級生たちと囲んで昼休みを過ごす。
もう一人増えたのが、竹岡くんの旧友である松尾大介くん。
彼はサッカー部だったそうだが、竹岡くんの真似をして応援団に入部を決めたそう。
テンションが高い竹岡くんに比べて、程よい筋肉質と冷静なツッコミを入れる松尾くん。
日焼けと少し長めの髪で、いかにも女子にモテそうな雰囲気がある。
「ってかさ。ウシガキって名前長いからあだ名付けようぜ!」
竹岡くんの提案であだ名を決めることに。
既に竹ちゃん、大ちゃんとニックネームのある二人は牛垣くんにあだ名を考えようと会話を弾ませている。