第42章 モデル
青春を謳歌する部活動。
元々部活に入るつもりだった牛垣くんの一晩待った答えを聞いて、竹岡くんは一周して黙り込む。
「よし決めた」
「なにを?」
「俺も応援団に入る!!」
「ついてくんなよ」
「理由ならちゃんとある!!長ラン着たい!!」
「それは同感!」
「よし、そうと決まれば。誰かシャープ貸して」
「懐に隠し持ってたのかよ」
「あんがと」
今ここで書くのかよと散々牛垣くんにツッコまれつつ、筆圧が強い字で入部届をかき上げる竹岡くん。
行動力というのは正しくこういうこと。
「提出してくる!」
「ホームルーム終わった時でいいだろ」
「時間は待っちゃくれねえー!」
「おい。廊下を走るなー」
「へーいっ」
最後までツッコミどころを忘れない牛垣くん。
牛垣くんは真面目だ。
「槍木は部活決めた?」
「俺は…その、バイトしようかなって」
「バイトかぁ…。そういう選択肢もあるよな」
「欲しいもの自分のお金で買えるようになりたいって思って」
「偉いなー!もう自分で稼ぐこと考えてるのか。高校になったら行動範囲広がるし、高いものが欲しくなるよな」
「えーなになに。牛垣くん、欲しいものあるの?ねえねえ、どんなもの?」
高圧的ではないが、体格の良さから威圧的な雰囲気を持つ竹岡くんがいなくなると近くに座っていた女子が甘えた声で話し掛けてきた。
複数の視線が牛垣くんに注がれる。
「言ってもいいけど誕生日は期待してないよ。それで散々な目に遭ったことあるし、誕生日もバレンタインも家族以外から受け取らないようにしてる」
(それ、ハッキリ言っちゃうんだ……)
モテる男はいうことが違う。
イヤな経験があったから雰囲気を匂わせた女子相手に今ここでハッキリと明言したのだろう。
それにしても、開口一番ギョッとしてしまった。