第42章 モデル
家は父のほうが早く出て、父のほうが遅く帰ってくる。
職場より通学場所を優先にしてくれたため、父の職場から大分遠くなってしまった難点だ。
「おはよー」
教室が騒がしくなって顔を上げると牛垣くんのようだ。
クラス全員に声が聞こえるように大きめに挨拶し、俺の前に来ると「おはよ」と小さく挨拶してくれる。
「なあ、槍木。昼一緒に食べないか?」
なに、と聞く前に本題に入る。
嬉しいはずなのに嬉し過ぎて、驚きのリアクションの方が大きくなってしまう。
「えっ…いいの?」
「おう。俺購買なんだけど、槍木は?」
「俺も、購買で買おうかなって…」
「じゃあ昼になったら一緒に行くか」
「う、うんっ」
「やあ諸君!俺もその食事会に混ぜてくれたまえ」
「誰だよおまえ。知ってるけど」
牛垣くんより身長の高くてがっちりした体格。
たぶんクラスで一番高身長の男の子。
「あんだけ竹竹竹竹いじっといてそりゃねーよぉ!」
「こいつは竹竹竹竹だそうだ。略して竹ちゃん」
「たけたけ…」
「竹岡竹蔵ぉ!早速いじってくれてどーも!!」
「槍木は貸さないぞ」
「俺は牛垣と話してぇのー!なあなあ部活どうすんの?一旦保留にしてたみたいだけど昨日の今日で決まった?バスケ?サッカー?それともドッジボール部作んの?」
「朝、職員室行って応援団の入部届出してきた」
「うぉーえんッだんッ!?」
「なんだよその意外そうな顔」
「いや、だって…んえぇえーっ?…なんで応援団!?応援する側なの!?お前ってされる側じゃないの!?」
「されるって妙な言い方しやがって。団長ひとりの応援メッセージ聞いて心にグッと来なかったか?俺はあれを聞いて応援したいと思った。だから応援団を存続させたい」
「応援されるならチア……いや、確かに一人でスゲーとは思ったけどさ」
「けどなんだよ。俺は団長が卒業しても続けるぞ。竹ちゃんは好きなバスケ続けろよ。俺が応援しに行くから」