第5章 髪
俺だって、
俺だって下の名前で呼びたい。
角は角っていうより、
湊っていう雰囲気をもった顔をしている。
けれど俺は上司。
今更、一人だけ特別扱いなんてできない。
「アキは会社のことになると真面目だね~。
今すっごい
ムズカシ~顔してる」
「クールじゃないのに格好付けすぎなんだよ。
そのうえ人たらしで何人の女の人と…」
「ちょい赤司。タンマ」
「あ?あぁ…ワリィ」
昔の女関係を口に出そうとした赤司。
会社の人間に、
遊び人だった過去を伝えるのは適切ではないと
ユウがすかさず止めにはいった。
赤司はそのままスタジオの準備をしに行き、
俺の仕上げも大体終わる。
それから角の施行に入り、
ユウの技術によって
長い前髪がカットされていった。