第5章 髪
角に向けて親しそうに微笑みかけており、
少しばかり眉間に力がこもる。
「角はおまえより年上なんだぞ?
許可もないのに下の名前を…」
「え?だって角さん、
っていったら助さんだろ?
そんな時代劇っぽい名前が肩っ苦しいし、
こっちの方が断然いいですよね!
ミナト~って、いう方が
響き良いじゃないっすか。ねっ!」
「だからって…」
「あ、いえ、主任。
俺は、どっちでも別に…」
「ほら、湊さんもそう言ってるし。
ウィンウィンじゃないっすかね!」
こいつ…。
自分が年下だということを
上手いように利用しやがって。
「なら俺も、湊くんって呼んじゃおうかな。
俺も仲間になっていーい?」
「あ、はい。それは全然」
「アキも湊くんと仲良くしたいんでしょ?
会社でいないの?
下の名前で呼んでる子」
「いるわけないだろ…」
同僚だって苗字呼びだ。
上司はあり得ないし、
部下だって…。