第41章 進学
電車は、通勤ダッシュで混むので歩くことにした。
東京都区部だけど緑が多い街。
登校初日はおひさまの天気。
学校が近づいてくると同じ制服を着た子がみえてきた。
「何組になるかな」
根拠はないが、何となく前の組な気がした。
かなり早めに出て来たから人は少ない。
玄関前にクラス分けの掲示が張ってあって、自分の名前を探す。
槍木だから男子前列。
1組から見ていくと探すことなくすぐ見つかった。
「1年1組……あった」
階段をあがって1組の教室を見つける。
俺より先に来ていた人はいたけど、挨拶できる気軽さは持ち合わせていない。
黒板のところに張ってある席順表の掲示。
出席番号順で並べられており席は廊下側の3番目。
校門前でも廊下でもそうだったが、色とりどりのお花紙で飾られている。
(前後の人だけ名前覚えておこう。前が牛垣くん、後ろが金子くん、一番前の阿部くんも覚えられそうだな。牛垣くん、金子くん、阿部くん……と)
最初はとにかく、クラスメイトの顔と名前を一致させる作業だ。
あまり関わらない女子は後回し。
男子の名前を憶えて、仲間外れにされないように頑張らないと。
(牛垣くん、金子くん、阿部くん…
牛垣くん、金子くん、阿部くん…)
頭の中で何回も呼ぶ。
下の名前もちゃんと記憶しとけばよかった。
たしか、牛垣くんの名前は和風っぽい感じだった。
牛垣っていう名字もあまり聞かない。
そういう俺の名字もなんだけど。
よくあるのが「ヤリギ」って読み間違われること。
また、名字でいじられないかと不安もある。
「!」
前の席にひとがやって来た。
顔と名前を一致させたいけど、緊張して前が見れない。
スッキリするようなほのかな香り。
丸みを帯びた聞きやすい声。
それに、コミュ力高い人っぽい感じだ。
自己紹介の時に顔をみて…いや、でも逆に席が近過ぎて…
「おはよう。前の席に座る牛垣武明。よろしく」
「お…」