第40章 ~槍木祐次郎の場合~
「あと、身バレもしづらいかも。文太が黒に戻したとき、誰かと思った」
「俺の黒歴史……。そんなら金髪で僕っ子はねぇから、俺の真似して”俺”って言やぁいいよ」
「俺も俺っていうけど」
「お前は一々俺に突っかかんなぁー!そんなに漫画面白いのか!?」
「おもろいおもろい」
二人のアドバイスのおかげで新しい中学生活も何とかなりそうだ。
折角、仲良くなれたけどすぐお別れ。
きっと大丈夫。
文太くんも治くんも笑顔で手を振って見送ってくれた。
父の運転する車に揺られ、これからは父と二人で暮らしていく東京の家に向かう。
「どこか寄りたい場所あるか?」
「ううん…。やっぱりまだ、こわいって思ってる」
もともと、人と話したり関わったりするのは苦手なわけではなかった。
ただ、施設内で安心して過ごせたのは、あの人たちが全員味方だったからこそだ。
だからといって外は全員敵というわけではない。
それは分かっているのに。
腑に落ちない恐怖が、どこかしら拭えない思いがあったのも事実。
「これからは父さんも目一杯がんばるから、祐次郎もがんばれよ」
「うん。がんばる」
しかし実際は、自分で思ったよりも重症だったと、後々知ることになるのだった。