第40章 ~槍木祐次郎の場合~
文太くんは勉強のやる気をまったく見せない。
しかし、機械を弄るのは好きだったらしく、バラして組み立てるという作業を黙々とやっている。
先生に頼んでいたモノが来てからはずっとそれに夢中になっていた。
あれから数か月が経った。
「祐次郎は真面目だなぁー。普通の高校行くのか?」
「うん。家のこと片付いたら、父さんと一緒に暮らそうって言われてるんだ」
「ふーん。それは別にいいけどさ。お前のこと、イジメた奴と同じになったら恐くならねぇの?」
「それは……。先生は、会う確率の方が少ないだろうって…」
「あー悪いっ!!別に不安にさせたかったんじゃないんだ。ただ心配になったっつーか。なんて言やぁいいだろ…」
「ううん。言いたいことは伝わった。高校も、地元じゃなくて東京行こうと思ってて」
「ぅえっ?!東京!?マジ!?」
地元は群馬県。
ブラック企業を辞職した父は、同じ関東圏内で新しい仕事に就くといっていた。
「成程。仕事の関係か。それなら仕方ねぇな」
「みんなと離れちゃうのは、寂しいけどね…。でもその前に、ちゃんと中学校卒業しなきゃ」
「今月末だっけ。ここ出てくの」
「うん。文太くん。色々面倒見てくれてありがとっ。すごく助かった!」
「おうっ!また、寂しくなったら戻って来いよ。あんまりオドオドしてっと弄られるだろうから、ピアスのあなでも開けてやろうか?」
「え。いや、…それはちょっと」
「なら、金髪にするとか、タトゥー入れるとか!そんくらいしないと…」
「取っつきにくくはなるよね」
同じ室内にいた眼鏡の治くんが、漫画本を読みながら口を開いた。