第5章 髪
ユウは自慢げに
写真をおさめたフォトアルバムを持ってくる。
「これは今まで俺が
カタログにさせてもらった人たちで、
探して行けばアキがいるよ。
で、こっちがヘアカタログじゃないんだけど、
アキがモデルやってた頃の写真。
雑誌の切抜きとか、ネット広告とか…」
「えっ!?主任って
初めはモデルさんだったんですか!?」
「若い頃は、まあ…旺盛だったんだ。
高校ん時と大学生の時…、
お小遣い稼ぎとか社会見学のつもりで
やってた時期があるんだ」
モデルとして写真を撮られ、
自分でも知らないような一面を発見できたし
称賛されるのは気分が良かった。
モデル業と並行して
俳優業もセットになっていた事務所だったため
舞台稽古やら何やらやったことがある。
やるからには全力でやった。
けれど当初から
芸能界で食っていくつもりはなく、
大学でしっかり勉強して
会社で一人前に働くことを選んだのだ。
「じゃあ角くんが写真を見ている間、
アキのカット始めちゃうね!」
「結局そういう魂胆かよ」
「俺は二人いないからね~」
ユウは口を動かしながら器用に手を動かし、
伸びた髪を整えていった。