第5章 髪
数日後の土曜日。
ユウを指名できる時間と、
角が空いている曜日を調整する。
「おう。
俺より早く来てるとはエラいな」
昼過ぎ、待ち合わせ場所に到着すると
角の姿がすでに見えていた。
「こんにちは…。
今日は、帽子なんですね」
「ああこれか?
オフだからセットしないで来たんだ。
おまえは見事なまでにボサボサだな」
「うわっ。
いつもと同じですよ…っ」
無意識に手を伸ばして、
髪をわしゃっと撫でてボサボサにしてやる。
どうせユウに整えてもらうんだ。
何の変哲もない行為。
角のスーツ以外の姿を見るのは初めてで…、
家着でTシャツもみたが、
アレは別物。
お洒落っ気のない服装を拝めて満足しつつ、
その足でユウが働く美容室へ向かう。
「あ、の…、
ユウさん、って…どんな方なんですか?」
「ん?ユウは…見た目のまんま優しい奴だ。
高校のときに会ったのが初めて。
いまは金髪に染めてヒゲを生やしてるけど、
俺みたいに頑固じゃないから安心しろ」
「自覚はあったんですね…」
「なんか言ったか~?」
「い、いえ」
街中を歩いて行き、
程なくして到着した美容室の門を開いた。