第5章 髪
ユウの長い髪の毛で遊んでいると、
煙草をくわえたユウが
思い出したように呟いた。
「夏用にさ~、
またヘアカタログのモデル
やってくれない?」
「あ~、いいぞぉ。
俺もさ~、
ユウに前髪きってほしいやついてよぉ、
前髪長くて暗~い部下がいんのよ」
「うん、いいよ~。
その子って…、
転社してきたって子ぉ?」
「あ~そうそう。
カク、っていうんだけどな。って教えたか。
…お~。でけた。
三つ編みのユウちゃ~ん。
はは、ウメーだろぉ?」
「酔ってるわりにはジョーデキ~」
ユウの綺麗な長い髪。
遊ぶにはちょうど良くて、
三つ編みを解いてくしゃくしゃと撫でる。
気を許した相手にしか、
こんなくしゃくしゃな撫で方はしない。
嫁にも、息子にも…、
やりたいとは思わない。
ユウも俺の気持ちを分かっているように
見つめてきて、
「ん?」
「な~んでも」
照れくさそうに微笑んだ。