第35章 美容院
美容院の扉を開くと
受付に立っていた
自分よりも少し背の低い男の子が
ぱぁーっと明るい笑みを見せる。
懐いた子犬のように
キラキラした目で見ており、
同じ職場にいる
安村くんを思い出してしまった。
(男でも憧れるんだから
ホントすごいよなぁ……)
牛垣主任が来たと分かると
手が空いていたスタッフがゾロゾロと寄ってきた。
暇なのか、と突っ込みたいが仕方あるまい。
社内でもよく見る光景。
打ち解けた雰囲気を出すと
向こうは足を止めて寄ってくる。
オーラの使い分けがえぐい。
これが一流の輝きを放つ
元芸能人なのか。
「おまたせ~っ」
すると物腰が柔らかそうな
おっとりとした声の持ち主が聞こえ、
主任の表情もパッと同時に柔らかくなった。
「ユウ」
「アキ!いらっしゃい。
角くんだね、はじめまして。
槍木祐次郎です。
気軽にユウとか、ユウさんって呼んでね」
主任のいう通り、
フワフワしていて
優しさで溢れているような
たんぽぽのような人だと思った。
顔立ちは整っているけど
どこにでも良そうな感じで、
主張はないけど
自然と癒される、みたいな…。
あと一番驚いたのは
決して低くはない主任より背が高かったこと。
(主任のみる目が優しい……)
この人が高校時代からの親友。
ヘタレ部分が全開なのか、
男らしいよりかは
朗らかで
主任が好くのも頷ける魅力的な人だと思った。