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《イケメン戦国》時を越えて

第14章 時を越えて〜分岐〜幸村ver.前編


ーーー同日、丑の刻。
「……んっ………ここは…」
意識が戻り、目を開けた舞は辺りを見回した。時刻は深夜。真っ暗な部屋でいくら目をこらしても何も見えない。ただ、分かるのは、固い床の上に転がっていることと、この部屋には自分以外の人の気配はないということ。それ以外は分からない。

ここはどこなのか、どうしてここにいるのかーーーそして、自分はどこの誰なのか…それさえも分からない。

そんな中、触れた温もり。ふかふかした毛と高めの体温。自分に寄り添うように側にいる大きなそれに気付いた舞は
「犬かな?あったかい。」
そう言って抱きつき、いつの間にか再び眠りについていた。

次に目が覚めたのは、日が昇る頃。部屋にただひとつある小窓と開け放たれた出入口から日が差し込み、室内を確認することができるようになった。見渡す限り何もない板張りの小屋の中には、大きな犬とそして自分。自分の身なりを確認した舞は、驚いて
「なにこれ?!」
と声を上げた。着崩れた着物はところどころほつれ泥だらけ。草履は履いておらず、足袋も泥だらけだった。触る限りでは、髪はボサボサ。腕や脚には青い染みができていて、擦り傷もあった。
「いたたっ」
とにかく着物だけでも直そうと体を動かすと体のあちこちから襲って来る痛み。目に見えない場所も負傷しているようだ。

それでも、ここにじっとしているわけには行かないと、なんとか頑張って着物を直し、這って小屋の入口を目指す。すると
「ウォン!」
と犬が一声啼いて、舞の前に前足も下ろして座る。舞をじっと見て、『乗れ』と言っている。それが分かった舞は、犬の背中の上にうつ伏せのまま乗り上げた。舞が乗ったことを確認すると、犬は立ち上がり、ゆっくりと歩き出す。
「ワンちゃん、ありがとう。」
舞が言うと
「ウォン!」
と啼いて尻尾を振った。

ーーー同じ頃。森の中。
「むらまさー!」
ピィーー
幸村は村正の名を呼び、指笛を吹いた。これは彼らの合図で、それを聞くと村正が姿を現すのだ。合図をしてしばらく待つ。いつもなら現れる時間になっても、村正の姿は確認できない。
「っかしーな。」
そう言いながら、もう一度合図を送って待つが一向に現れない村正。
「もっと奥か?」
と歩を進め、再び合図を送る。それを何度か繰り返したが、村正は現れなかった。
幸村はそこである可能性に気付く。
「舞と一緒か?!」
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