
第14章 時を越えて〜分岐〜幸村ver.前編

幸村はすぐに城へと引き返し、佐助を探す。
「佐助!」
見つけるや否やすごい勢いで駆け寄り、
「獣の足跡を追えるヤツいるか?」
と聞く。
「えっ?獣?竜が得意だけど。」
佐助が答えると
「竜はどこだ!」
と食ってかかる。
「幸村!落ち着いて!なんで獣の足跡を追うのか説明して。」
佐助に宥められ
「舞は村正といる。村正の足跡を追えば舞に辿り着くはずだ。」
「村正?どうして?」
「村正に頼んでたんだ。『舞を守れ』って。だからここんとこはずっと近くの森にいた村正が、いくら探してもいねー。村正は勝手にどっか行くヤツじゃねえ。」
「そういうことか!分かった。すぐに竜と森へ向かうから、幸村はもう一度、村正を探してみて。」
「分かった。」
そうして、幸村と佐助は動き出した。
ーーー四半刻後。
幸村、佐助、竜の三人は村正の足跡を追って進んでいた。
「森からずいぶん離れたな。」
捜索開始から一刻ほど過ぎた頃、そう佐助がこぼしたその時、
「これは!」
先頭を進んでいた竜が大きな声を上げた。竜のいる場所に幸村と佐助が駆け寄る。
「…舞のだ。」
そう幸村が断言したものは、女性用の草履。左右バラバラに落ちていた。
「あれは?」
佐助がなにかに気付き、そこまで行って拾い上げる。
「手提げ…」
それは、昨日出掛ける時に舞が手に持っていたものだった。
「ここでなにが…」
佐助が言うと、辺りを調べていた竜が
「お二人ともこちらに!」
と呼ぶ。
「ここに血痕が残っています。血は獣のものと人のもの。恐らくここで争ったのでしょう。」
そう言って指された地面を見れば、確かに血と人と獣と思わしき足跡、抉れた地面があった。
「舞と村正が…まさか…」
舞と村正が怪我を負ったのではないかと顔を青くする幸村。
「とにかく先を急ごう!」
そう佐助に促され、我に返った幸村も走り出した。
ーーーその頃。
舞は村正に負ぶわれて、山の中を進んでいた。どこに向かっているのかは分からない。でも、この犬は自分を安全な場所へ運ぼうとしているという不思議な安心感から、犬の背中で黙って揺られていた。
しばらく進み、舞が何気なく後ろを振り返った時、
「ーーーっ!」
あるものに気付く。
「止まって!!」
舞は叫ぶと、慌てて犬の背中から降りる。
「あなたケガして?!」
そう言って、足を見てみれば、犬は右後ろ足から血を流していた。
