
第14章 時を越えて〜分岐〜幸村ver.前編

〜幸村目線②〜
「幸村が『嫁にもらってやる』って言ってくれて嬉しかった。本当に嬉しかったの。でも、それに甘えて幸村の幸せを奪うわけには行かないから…。」
(なんだそれ。こいつ本当にムカつくなー。)
「……お前は本当に分かってねえ。」
「なっ、なんでそんなーー」
「俺がお前に言った言葉は慰めでも同情でもない。俺がお前の側にいたくて、お前にずっと側にいて欲しいから言ったんだ!お前が好きだから『嫁に来い』って言ったんだよ!!」
「えっ?嘘…」
舞は驚いて目を見開いた。
「嘘じゃねえ。こんなことで嘘なんかつかねえ。俺はお前が好きだから嫁にしたい。だから、『嫁に来い』って言った。いつまでも過去のくだらない男の言葉に縛られて、目を逸らしてんじゃねえ!俺の言葉を、俺を信じろ!!」
思いを一気に吐き出した。
「ーーっ、幸村……ううっ」
舞はボロボロ泣き出した。そんな舞を腕に閉じ込めると舞は俺の胸に顔を埋めた。
「っ…ゆっ、ゆきむら…ありがとう」
嗚咽混じりで言う舞に
「俺は『ありがとう』より、『好き』って言って欲しい。お前が俺を『好きだ』って言葉が聞きたい。」
そう言うと
「……す…き」
小さな声が聞こえた。
「ーーーっ」
すげえ嬉しかった。嬉し過ぎて
「おー」
としか返せなかった俺を、
「ぷっ…また『おー』って…クスクス」
舞は笑った。
ん?ちょっと待て。
「なあ、舞。お前の言う『好き』ってどういう好きだ?」
突如、不安になった俺は舞に尋ねた。
「どっ、どういうって…どういう意味?」
「あー、お前のことだから俺の思う『好き』と違うんじゃねーかと思って。」
「『好き』は『好き』でしょ?他になにがあるの?」
「あー、もう!俺の『好き』は恋仲になりたいってヤツだけど、お前も同じか?」
言いながら顔が赤くなるのが分かる。
「えっ?えーと…『違う』って言ったらどうするの?」
「やっぱり違うのか?そうだよな…。でも、俺とお前の『好き』が違うなら、ぜってーいつか俺と同じにしてやる!それだけだ!!」
そう宣言した俺に
「…意地悪言ってごめん。同じだよ。幸村と同じ『好き』だよ。」
と舞は申し訳なさそうに言った。
「はぁ〜。良かった。って、てめー、このヤロー!」
心から安堵して、舞の頬をつねる。
「ごっ、ごめんなひゃい」
頬をつねられながらそう言う舞がおかしくて
「ぶっ」
と吐き出した。
