第6章 夏合宿やるってよ
笑いかければ、「よろしくお願いシャス!」と勢いよく頭を下げてくれる仁花ちゃん。
潔ちゃんとは全く違うタイプだけど、可愛い。
「よーうおのぼりカラス。」
黒尾くんの声。
みんな、準備が終わったようだ。
『あ、黒尾くん。アップ終わったらもう入っていいって、猫又監督が。』
「んー。了解。サンキュ。」
私は黒尾くんに連絡をするけど、珍しく目が合わない。
もう目の前の烏野メンバーしか見ていない。
来るの、楽しみだったんだなぁ。
「女子が2人になってる!! 」
そう騒ぐ山本くんに、「うちは倉尾がいるからいいだろー。」とボヤいてくれるやっくん。
少し照れくさい。
烏野が来るのを楽しみにしてたのは、黒尾くんだけじゃないみたいだ。
やっくんも、海も、山本くんも、みんな各々烏野メンバーに声をかけに行く。
烏野が泊まる予定の部屋に案内して、潔ちゃんと仁花ちゃんはマネージャーが泊まる部屋に案内して。
体育館に戻れば、もう練習は始まっていた。
私は音駒が試合をしているところに、いつものノートとマネージャーバッグ(通称マネバ)を持って向かう。
まだ1セット目だ。間に合ってよかった。
記録をつけて。
得点を動かして。
「舞衣ちゃーん、水道ってどこ使えばいい? 」
『あ、体育館出てすぐのところ! 右側にあるんだけどわかるかな? 』
「わかったー! ありがと!! 」
「舞衣ちゃん、このカゴどこ返せばいい? 」
『体育倉庫の脇に置いてくれれば大丈夫! 』
「はーいっ」
うちでの練習ということもあり、いつものマネージャー業にプラスして場所や物品の質問も飛び交う。
ここにいるマネージャーのほとんどの人よりマネージャー業の経験が少ない。
頭が回らなくなりそう。
いや、楽しい。
色んなことを一度にこなす。
どうやったら効率がいい?
メンバーのサポートを最優先にするには?
「次、烏野だっけ。」
『うん! そうだよ! 』
黒尾くんからきかれ、返事をする。
得点。
記録。
試合順番の把握。
移動。
備品の整理。
コートの整備。
メンバーの状態。
色々なことを把握しながら動くのは、楽しい。