第2章 帰郷
「あ、、、!」
アオイの気配を辿って行くと意外にもまだ屋敷の中、、、あの縁側にアオイはいた。
良かった、外には出ていなかった、、、!
もうすっかり日は沈んで、空には月が浮かんでいた。
「おい、、、」
意を決してその背中に声をかける。
紋逸が言った「マズイこと」ってのは未だに何のことだかさっぱりだった。だが、アオイはまた泣いているのではないか?そんな気がして。
俺の頭に浮かんだのは、あの晩、この場所で、月の光に照らされながら1人涙を流すアオイの顔で。
「お前、、、」
胸が早鐘を打つのを聞きながら、その肩に手をかけた。
一瞬ビクッと肩を跳ねさせたものの、アオイはゆっくりと振り向いた。
「何でしょう?」
「!」
そしてその目には涙は浮かんでいなかった。
それどころか、アオイはニッコリと微笑んで。
月明かりに照らされたその顔はしのぶみたいで。
一瞬、ドキッとしたのは驚きのあまりだろうか。
「お、お前、、、大丈夫か?」
「大丈夫です。すみません、ちょっと気分が悪くなったもので飛び出してしまいました。でももう治りました」
戸惑いながら聞いた俺の問いに食い気味に答えるアオイ。
テキパキとしたその様子は今まで通りのように見える。
「そうか、、、?」
「はい。さて、お腹空きましたでしょう。すぐに準備をしますね」
だが何かがおかしい。
笑っているのに。
元気そうなのに。
「あっ、おい!」
「何ですか?」
「お前、やっぱりなんか、、、」
「今日は良い魚が手に入ったので、魚にしましょう。すぐにできますからお部屋で安静にしててください」
何でコイツ、さっきから俺の目を見ようとしねぇんだ、、、?
「そんなこと言ってんじゃねぇんだよ!!」
何でコイツ、俺に質問させねぇんだよ、、、?
カッとなった俺は台所へ向かおうとするアオイの肩を思い切り掴んでいた。