第2章 帰郷
ジー、、、。
俺はベッドに横になりながら自分の指を見ていた。
思い出すのは「、、、好きだなぁ」と、そう言って微笑んだアイツの顔。
「、、、う!」
バッ!!
なんだか口の中が酸っぱいような気がして、俺は布団に潜り込んだ。
う、、、何だ?心臓もバクバクする。
顔も勝手にニヤけやがる。
一体これは何だ?
「ふー、、、大丈夫だ。落ち着け、俺」
息を整えてゆっくりと布団から顔を出す。
そもそもあれは俺に向けられた言葉じゃねェ。
大丈夫だ、大丈夫。
いや、待て。そんな考えじゃ、もしあれが俺に向けられたものだったら、、、俺は大丈夫じゃねェってことになっちまう、、、!?
「なぁー、さっきから何してんの?伊之助」
ビクッッ!!
隣を見ると、ベッドに転がりながら紋逸がこっちを見ていた。
コイツ、さっきまで寝てたくせに!
「な、なな、何でもねェよ!何だよ!急にッ!!」
「何言ってんだよ、ずーっと起きてたよ!そんなにずっと寝てられないよ!だって動けないんだもの!今すぐ禰󠄀豆子ちゃんに会いに行きたいのに、動いちゃダメってアオイさんが!!何なの、目覚めた瞬間はちょっと優しかったのに、すごく怖いんだけどぉ!ちょっとでも動いたらすごい剣幕なんだけどぉ!!ねェ、伊之助!?聞いてる?ねェ!!」
「知らねぇよ!テメェが全然言うこと聞かねェからだろーが!!」
アオイという響きにまた胸のあたりが苦しくなる。
それを隠そうとすると紋逸への言葉も勝手に鋭くなった。
アオイは相変わらず紋逸や権八郎、カナヲの看病に追われていた。
まめに様子を見にきては、毎晩のように薬の調合を考えている。
何もできない俺はこっそりとアオイの部屋の前で、作業が終わるのを待つ。
会話は特にない。
「あー、禰󠄀豆子ちゃん。次来るのは夕飯の時かな?」
「、、、ふぁーあ」
「あー早く来ないかな?もうベッドの上は飽きたよー。って伊之助、聞いてる?」
正直、寝不足だ。
まぁ、俺は昼寝したらいいんだけど。
アイツは一体いつ寝てやがる。
「夕飯まだかなぁー、さっきアオイさんが玄関を出て行く音がしたから、買い出しに行ったってことだと思うんだけど」
あの野郎。
買い出しの時は声かけろっつってんのに、また勝手に行きやがった。
明日は待ち伏せしてでも行ってやる。