第2章 帰郷
「俺はどこにも行かねェからな!!どっか行けって言ってもずっと、ずーーーっと、テメェが嫌になったってずっと居座ってやる!!」
その言葉にハッとする。
「分かったら、ん!」
パッと目の前に出されたのは、小指?
「、、、」
驚いて目を丸くしていると
「早くしろよ!のろま!」
乱暴に繋がれた小指の先からじんわりと熱い温度が伝わってくる。
「約束だ、俺はどこにも行かねぇよ。もし約束破ったら針千本でも何でも飲んでやる」
珍しく落ち着いた優しい声がストンと胸に落ちた。
「、、、どうして、、、?」
私は引っ込んだはずの涙を拭った。
声はうまく出なかった。
「う、、、ウルウルするんじゃねェ!!」
「、、、ッ」
「お、親分だからな!俺は!言っとくが、それだけだかんな!!」
素直じゃない。
乱暴だし、訳の分からないことばかり言うし。
優しくなんかない。
姉さん達とは全然違う。
それなのに。
どうしてこんなにも。
「聞いてんのか、オイ!子分4!」
「、、、子分4って何よ、、、」
「ハァ?それは権八郎が1で、紋逸が2で、禰󠄀豆子が3だろ?そんでテメェはその次だから4だろうが!」
「4番目、、、」
「そうだよ!テメェなんか4番目だかんな!ま、もっと頑張れば格上げも考えてやらなくはない!!」
「何で上からなのよ、、、」
「俺様の方が上だからだ!っつかテメ!さっきから親分に向かって
タメ口聞きやがって舐めてんのか!!」
「ぷっ、、、そんなこと言ってるとおにぎり作ってあげないけど」
「そっ!テメ!卑怯だぞ!!」
「あ、ははっ!」
どうしてこんなにも
この人の隣は心地が良いんだろう。
「、、、好きだなぁ、、、」
「ア?何って?」
「ッ!!いや、違う!その、、、あ、そんなにおにぎりが好きなのかなって、、、!」
「ハ?何焦ってんだ?言っただろ?好きだぞ、お前の握り飯は」
「あ、はは、そう、おにぎり、、、ね。いっぱい作るね」
私、何を言った、、、!?
「おう!んじゃ、できたら呼べよ」
バタン!と大きな音を立てて閉まった扉に。
おにぎりを指して発せられた、好きだぞ、なんて言葉に。
溢れてしまった気持ちに。
大きく脈打つ鼓動をどう受け止めればいいのか、私には皆目分からなかった。