第2章 帰郷
「いいか、お前!俺はお前に付き合ってやってたんだから、俺の言うこと聞けよ!」
全くこちらを見ようとしないまま、威張り散らすその姿に思わず笑みが溢れた。
「あは、、、いいですよ」
「ハァ?ふざけんなテメェ!テメェが待て待てとうるさいから、誰が一晩中寝ずに手を握ってやったと、、、って、は?いいのか??」
あぁ、そうか。
手が温かいのはそういうわけか。
「本当に本当か!?」
「はい。本当ですよ」
「じゃ、じゃあ握り飯!握り飯作れ!!腹が減ってもう死にそうなんだ!!」
「握り飯、、、?」
そんなことで良いんだろうか?
「あぁ!テメェの握り飯は美味いからな!こーんなでっけぇの!いっぱいだぞ!!」
私の作ったおにぎりが美味しい?
瞬間、懐かしい匂いが鼻をくすぐる。
霞んだ視界の先で姉さん達が笑った気がした。
「、、、ッ」
どうして、どうしてそんな事を言うんだろう。
「ア?テメェ、またか!?何泣いてんだ!俺、何か言ったか!?意味分かんねェぞ!」
「泣いてなんかいません、、、ッ」
どうしてこんなに優しいんだろう?
「嘘こけ、バカ!どう見ても泣いてんだろーが!」
「自分だって、よく泣いてるじゃないですか!」
「ハァン!!?俺は泣いてなんかいねーっつの!!」
知ってるんだから。
自分だってまだまだ辛いくせに。
伊之助さんと睨み合う。
伊之助さんはいつまで経っても目を逸らそうとはしなかった。
だけど
グゥー、、、
「あ!この!勝手に鳴るんじゃねぇ!」
伊之助さんの腹が鳴る。
私は思わず吹き出してしまった。
「、、、おにぎり作りますね。着替えをするので出て行ってもらえますか?」
涙を拭って言う。
「あ!?いや、、、あぁ、けど無理すんなよ」
作れと言ったくせに。
腹が鳴る程、お腹が空いているくせに。
本当にこの人は素直じゃない。
そんなところがおかしくて。
私はいつだって笑ってしまう。
呼吸を整えて扉に向かう背中を見た。
とびきり大きなおにぎりを作ってあげよう。
食べ切れないほど作ったら、どんな顔をするだろうか?
そんな事を考えながら。
その時。
「おい!いいか、テメェ!」
突然、伊之助さんはドアノブに掛けた手を止めた。
そしてビシッと指を私に向けて指して怒鳴った。