第45章 繋がる記憶
そんな炭治郎の中では縁壱との夢を見た事により、色んな物事の見え方が変わっていた。
炭(何百回と説明を受ける事に加えて“正解の形”を一度見せて貰えると、理解度が格段に変わる。俺はただ、夢を見ているだけかもしれない。それでもほんの僅かな手首の角度の違い、足の運びの違い、呼吸の間隔を知り、自分の無駄な動きに気づけた。)
──────── ──────────────────
縁壱さんは、物静かで素朴な人だった。
すやこさんが剣の型を見たいとせがんだら見せてくれるような優しい人で、炭吉さんはそれをつぶさに見ていた。
1つも取り零さず、その瞳に焼き付けた。
日の呼吸の型は息を忘れる程綺麗だった。
あまりにも、美しすぎた。
後に、神楽として受け継がれていった理由がわかる。
剣を振るう時、縁壱さんは人ではなく精霊のように見えた。
すやこさんや子ども達が喜んではしゃぐと照れくさそうにうつむいていた。
また遊びに来てくださいと言ったけど、別れ際縁壱さんは炭吉さんに耳飾りをくれた。
ああ、縁壱さんはもうここへは来ないのだと思った。
遠ざかっていく物悲しい後ろ姿に、涙が出てきた。