第44章 反撃の狼煙
自身の顔のすぐ横を通り過ぎていった強風を受けて気がつくと見えなくなっていた不死川の存在を感じる。
ー 桜の呼吸 陸ノ型 花嵐 ー
不死川の風を追いかけるように杏も技を仕掛ける。
先刻まで死にかけていたのが嘘のような圧倒的な反撃。
これは悲鳴嶼も感じていた。
悲(僅かながらの余裕だが戦力が増して集中できる。透き通った感覚で無惨の体を捕捉すれば戦いに有効な情報を得られるはずだ。音の反響を良く聴け。感知したあの時と同じように。)
──ズズッ
無惨の攻撃が分散され、殆どの自分に向いていない僅かな時間を頼りに悲鳴嶼は無惨の体を凝視し始めた。
──ズズズッ
無惨の体が透けた状態で視えるようになった。
視えるようになった悲鳴嶼は無惨の体を視て驚愕した。
悲(脳と心臓が多数ある!!信じ難し!!無惨…!!この男…臓器という複雑なものを一個体の保有数をも超えて造る事ができるとは!!これが…この男が頸を切断されても死なぬ理由!!)
更に、不死川たちの攻撃によりもう1つ分かった。
悲(しかも、この脳と心臓…移動する!!位置も定まらず、攻撃の難易度も高い。)
今まで少しでも無惨の体力を削れればと思い攻撃していたが、そんな攻撃では無惨の臓器を傷付けることは不可能だと悲鳴嶼は瞬時に理解した。