第4章 わっしょい
「煉獄さん、実は私、煉獄さんはある人に少し似てるなって思っていたんです」
「ほう、どなたかな?」
「私の兄です。私には兄が二人いて、その上の方の兄に、煉獄さんは何となく似ています。兄も、よくこうやって私のことをおぶってくれました」
もちろん見た目や性格は全く異なるのだが、時折向けられる優しい微笑みだったり、こうやって自分をさりげなく助けてくれるところなどに、兄と同じものを感じるのだった。
「そうか……。では、俺からも一つ白状しよう。君は、俺の母上に顔立ちが似ている」
「煉獄さんのお母様に、ですか?」
「あぁ。母は俺がまだ子どもの頃に亡くなられているが、時折見せる君の真剣な表情、その凛とした顔がよく似ているのだ」
亡くなった、と聞いて、咲は少し口をつぐむ。
杏寿郎は前を向いたまま、明る過ぎもしないし、暗くもないような口調で言葉を続けた。
「実を言うとな、君のことを初めて見た時、俺は心臓が止まるほど驚いたんだ。まるで母上が生まれ変わられたのかと思うほどに」
そう言ってから、少しだけ顔をこちらに向ける。
「片足が無いというのは君が思っている以上に不利になるだろう。先の鳴柱も片足を失ったことを理由に引退した」