第4章 わっしょい
「わぁ……高い」
自分が普段見ている景色とは全く異なる風景に、咲が思わずそう呟くと、杏寿郎は愉快そうに笑った。
「ははは、そうか!」
それから燃えるような色をした髪をピョコピョコと跳ねさせながら、ズンズン大股で歩き始めた。
そのあまりの速度に、杏寿郎が今までいかに咲のゆっくりとした歩幅に合わせてくれていたのかという事がよく分かった。
「すみません……」
自分の不甲斐なさを痛感したことと、杏寿郎に迷惑をかけてしまっていたことに気づいて、しょんぼりとしながら咲が言う。
だが、杏寿郎は迷惑だなどとは全く思っていない様子で、むしろ弾むような声で言った。
「なんのなんの!ところで、君は羽のような軽さだな!もっとたくさん食べるといい!」
そう言うやいなや、杏寿郎はピョーンと大きく飛び上がった。
人間業とは思えないような跳躍に、咲は呆気に取られる。
「そうだ、家に着いたら焼き芋を食べよう!俺はさつまいもが大好きなのだ!」
「存じてます。煉獄さん、いつも焼き芋や芋けんぴを持ってきてくださっていたから」
「よもや!」
思わずクスクスと笑い始めた咲に、「意外だ!」と言わんばかりに杏寿郎が声を上げる。
この人のこういう少し抜けているところがとても可愛いなと、失礼ながらも咲は思うのだった。