第4章 わっしょい
ふいに話題が変わり、咲の表情も真剣なものへと変わる。
「つまり、それほどの剣士でも、片足を失った状態では十分に戦えないということだ」
コクンと咲は頷いた。
その微かな振動は、杏寿郎にも伝わったことだろう。
杏寿郎は言葉を続ける。
「だから君が鬼殺隊に入るというのも、俺は決して手放しで賛成している訳ではないんだ。だが、君の覚悟に俺は胸を打たれた。だからできるかぎり君の力になりたいと思っている」
淡々と、しかし優しさと心配が入り混じったような、本当に自身の身を案じてくれているのだと分かる言葉に、咲はツンと鼻の奥が痛くなる。
「……もしかしたら、この身体では剣士になることは難しいのかもしれません。でもやっぱり私は……挑戦してみたいんです。それに、もし剣士になれなかったとしても、隠にならなれるかもしれない。隠として剣士をサポートすることで、私にも何かできることがあるかもしれない」
そう言いながら咲は涙がこぼれそうになってしまい、思わず杏寿郎の背中に顔をうずめて、首に回した手にギュッと力を込めた。
しがみついてきた小さな体の温もりに杏寿郎はふっ、と小さく息を吐くと、それから大きく吸い込んだ。
「うむ、その通りだ!その志があれば、いつか必ずあの鬼を倒せるだろう!俺も共に戦おう!!だが咲、くれぐれも無茶はするなよ!」
「はい!!」
杏寿郎の勢いに呼応するように、咲もまた大きな声で返事をしたのだった。