第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
例えば、ヒカルが物語の主人公なら、アズールの手を取って、共に歩む未来を望めただろうか。
いいや、無理だ。
だって、こんなにも臆病で卑怯な主人公は、この世に存在しないだろうから。
不毛な恋。
フロイドとジェイドが言っていたセリフが胸に刺さったのは、まさしく自分のことだと思ったからだ。
片恋だから、人間と人魚だから、異世界人だから。
理由はいくつもあるけれど、それだけじゃない。
なにかの奇跡で想いが届き、アズールと恋人になれたとしても、ヒカルには彼を引き留めておける自信がない。
現実世界で何人かの男と付き合ったヒカルは知っている。
恋人なんて、一時のものに過ぎない。
熱が冷めれば別れ、友達にも戻れなくなる。
友達以下の他人になったら、触れ合うことも叶わないかもしれない。
ヒカルがアズールを嫌いになる可能性なんか微塵もなくても、アズールは違う。
卑怯であさましい女を好きでいてくれる保証もないし、そうでなくても、人の想いは移りゆくものだ。
大好きな人にフラれ、異世界でひとぼっちになったのなら、ヒカルはどうしたらいいのだろう。
全力で恋に走るためには、あまりに失うものが多く、まさしく不毛な恋だ。
だから、ヒカルは決めた。
アズールがユウと結ばれたら、この恋を終わりにしようと。
そう思ってはみたものの、大好きな人を諦めるのは難しいから、できるならば、アズールにフッてもらいたい。
優しさなんかいらない。
手酷く、辛辣にフッてもらいたい。
そうしたらきっと、ヒカルも彼への愛を断ち切ることができるだろう。
いつか元の世界に帰る方法が見つかった時、迷わずこの世界と別れられるように、必要不可欠なことだった。