第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
物腰だけは柔らかい分、ジェイドは怖い。
なんなら本当に絞め落としてから連行されそうで、両手を突き出しながら、どうどうと宥めた。
「お、落ち着こうか。わかった、行くよ。行くから。」
「ふふ、わかっていただけたようでなによりです。では、ご案内します。」
オクタヴィネル寮へは何度も足を運んでいる。
今さら案内なんていらなかったが、右にジェイド、左にフロイドと両脇を固められては、怖くて異を唱えられない。
途中ですれ違った生徒たちもぎょっと二度見をし、関わりたくないと言いたげに去っていく。
パーソナルスペースを完全に無視した距離感でくっつかれ、気分は捕らえられた宇宙人。
アズールからの呼び出しは何度もあったけれど、これほど有無を言わせず連行されるのは初めてで、そっと双子の顔を窺い見たが、にやにや笑う彼らの表情からはなにも読めなくて嫌な予感だけが募る。
戸惑い、不安になりながら連れてこられた先はモストロ・ラウンジのVIPルームで、中ではアズールが待ち構えていた。
「ああ、ヒカルさん。お呼び立てしてしまってすみません…――その恰好は?」
最初こそ朗らかに笑っていたアズールは、すぐにその笑みを引っ込めて、ヒカルの服装を一瞥する。
「これから行くところがあったの。」
ヒカルとしては、嫌味のつもりだった。
お使いの邪魔をされ、不服な気持ちを表したつもりで。
しかし、それをどう受け取ったのか、アズールの顔が一瞬歪む。
悲しそうな、悔しそうな、辛そうな、憎そうな顔。
見たことがないアズールの表情に虚を突かれ、無理やり連行された憤りも忘れた。
けれどもアズールが感情を露わにしたのは僅かな間だけで、瞬きをひとつする頃には、いつもの胡散臭い微笑みを浮かべた彼に戻っていた。
ただ、スカイブルーの瞳だけが笑っていない。