第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
今日のヒカルのミッションは、町に出て職人の店へ向かい、掃除機の修理を依頼するだけだ。
それだけのはずなのに、肝心のクロウリーの部屋へ向かうことができない。
フロイドが邪魔をしてくるせいだ、物理的に。
「ちょ……、なんなの? 苦しい、苦しい!」
ウツボの長い腕がヒカルの身体に絡みつき、ぎゅうぎゅう絞め上げる。
うっかりすると意識を手放してしまいそうで、逞しい腕をパンパン叩いた。
「えー? これでも手加減してんだけど?」
「手加減以前に、離してってば!」
「まだダメ~。これ、オレのお仕事だから。頑張ってよ、たぶんそろそろ……あ、ほら、お迎えが来た。」
お迎えとはなんだ。
まさか空から天使でも降ってきたのか。
しかし、昇天間際のヒカルを迎えに来たのもまた、ウツボだった。
「こんにちは、ヒカルさん。おやおや、ずいぶんと手荒な引き留め方ですね?」
「ジェイド、おそーい。」
「すみません、少々手間取りまして。けれど準備は整いました。ヒカルさん、アズールが呼んでいますので、オクタヴィネルまでご一緒しましょう。」
ジェイドが来た途端にフロイドの腕が解け、圧迫感から解放されたヒカルはぐったりしながら荒い息を吐き出した。
「はあ、はあ……。ア、アズールくんが……? 悪いけど、明日にしてくれる? わたし、今日は忙しいから。」
「明日、ですか。貴方に明日はあるのでしょうか。」
「……どういう意味?」
まさか、言うことを聞かなければ明日の朝日は拝めねぇぜ!とでも言いたいのか。
どこのヤクザが言うセリフだよ……と思ったが、彼らはれっきとしたインテリヤクザ集団である。
「意味については、どうぞご自分で考えてください。……しかし、困りましたね。絶対に連れてくるよう厳命されているもので。僕、手荒な真似は苦手なんですけどねぇ。」
眉尻を下げ、にやりと笑ったジェイドの口からギザギザの歯が覗く。
フロイドよりも数倍凶悪な笑みに、ぞっと悪寒が走った。