第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
フロイドが仕事を手伝ってくれたおかげで午後のスケジュールを比較的早く終えたヒカルは、オンボロ寮に戻って作業服を脱いだ。
いくら異世界とはいえ、野暮ったい作業着で町へ出る気にはなれず、私服に着替え直す。
とはいえ、一度も買い物をしていないヒカルが持っている私服といえば、この世界にトリップした日に着ていたものだけで、コスプレ感が漂うツイステッドワンダーランドから見れば多少浮いている。
今後、また町に出る機会が増えていくならば新たな私服も調達しなければと考えながら、寮の扉を開く。
約束の時間にはまだ早いけれど、少しくらい余裕をもって訪ねても無下にはされないだろう。
「ばぁ!」
がちゃりと扉を開けたら、脇に隠れていたであろうフロイドがひょっこり顔を出す。
「うっわ……! びっくりしたぁ!」
フロイドが飽きずに待っていたとは思わず、飛び上がって驚いた。
てっきりオクタヴィネルに帰ったものと思っていたのに。
「な、なにしてるの?」
「だからぁ、尾行ごっこしてるって言ってんじゃん。……てか、なにそのカッコ。」
上から下まで睨めつけられ、悪いことをしているわけでもないのにたじろいだ。
「これはちょっと、行くところがあって……。」
「……ふーん、アズールが言ってた話、本当だったんだぁ。なんかゲンメツ~。」
「はあ?」
なぜここでアズールの名前が出てくるのかさっぱりわからないが、幻滅という言葉には少々頭にきた。
確かにここのところ相談役としての責務を放棄しているが、はっきり呼び出しを受けたわけでもないし、幻滅される覚えはない。
それともなんだ、教えることを教えたヒカルには、もう価値がないとでも言うのか。
「あれ? ヒカルちゃん、もしかして勘違いしてんの?」
「……なにが?」
機嫌を損ねたヒカルの態度は若干悪い。
フロイドの発言そのものが原因なのだが、彼は少し考えたあと、にんまりと悪戯っぽく笑う。
「ま、いっかぁ。その方がおもしれぇし。」
「だから、なにが?」
ヒカルの想いも、アズールの想いも、どちらの気持ちも知っているフロイド。
彼がもう少し協力的だったのなら、この先に待ち受けている未来がもっとマシになったのにと、後々になって恨む。