第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
ヒカルと契約を交わし、相談役として迎え入れ、すべては順調に進んでいたはずだった。
アズールの計画に、狂いなんて生じない。
その自信の源は、唯一無二のユニーク魔法、黄金の契約書があるおかげ。
魔法は、嘘をつかない。
努力をすればするだけ応えてくれるし、いつでもアズールの味方。
だからこそアズールは、魔法を信じすぎる。
絶対に解けない魔法など、この世にありはしないのに。
(ヒカルさんは、僕の相談役だ……。)
アズールの恋が成就するまでは、契約が途切れることはない。
けれども、ヒカルに課した契約は彼女の行動を制限させるものではなく、元の世界への帰還を止められない。
ヒカルが異世界に帰った場合、契約はどうなるのだろうか。
イッツ・ア・ディールはヒカルの意思では解除できないけれど、魔法という概念がない異世界で効力が持続する確証はなく、最悪の場合、ヒカルの帰還と共に強制解除されてしまう。
そうなれば、ヒカルとアズールを結ぶものはなにひとつとして残らない。
(……いやだ。)
失いたくない。
せっかく得た協力者を、相談役を、手放したくない。
無意識に、二の腕の内側を握りしめた。
あの日、ヒカルに無理を言って付けてもらったキスマークは、もうすっかり薄くなってしまっていた。
なぜあの時、無理やりにでもヒカルの肌に痕跡を残さなかったのだろう。
強く強く吸いついて、一生消えないくらいの痕を残したら、彼女はいつまでもアズールの傍に留まっていたかもしれないのに。
ヒカルは、アズールよりも故郷を選ぶ。
この世には努力だけではどうにもならない苦難があると、久しぶりに思い出して目の前が真っ暗になる。