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Change the world【ツイステ】

第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】




ヒカルを追って校舎の裏にまで来たアズールは、ようやく彼女を見つけた。

しかし、すぐには声を掛けられなかった。
探していたヒカルはひとりではなく、クロウリーと話をしていたからだ。

聞き耳を立てるのは、もはや癖。
いつどこで誰の弱みを握れるとも知れず、情報収集には余念がない。

実際にはヒカルの弱みを握りたいとは思っていなくても、自然に会話を盗み聞く。

だが、断片的に得た情報は、時に誤解を生む。


「……ヒカルさんが帰る方法なら、ちゃんと用意してあります。私、優しいので!」

初めに聞こえたのは、クロウリーの声だった。

それより前の会話は、わからない。
けれども、“帰る方法”というワードにアズールの心と身体が一瞬にして凍った。

「帰る方法、あるんですね?」

ヒカルの反応は、はっきり言って微妙。
喜んでもいないし、かといって落胆してもいない。

ただ、確認するように問い返しただけ。

「ええ、特別な馬車を出してあげましょう。それに乗れば、きちんと帰れますからね。」

特別な馬車。
そんなものが……、異世界を行き来できるような馬車が学園にあったなんて、今の今まで知らなかった。

帰る方法がある。
それはすなわち、ヒカルが元の世界に帰ることを意味する。

ヒカルが、帰る。
異世界へ、帰る。

フロイドへの怒りも、ヒカルが流した涙の理由も、すべてが彼方へ吹き飛んでいく。

それくらい、衝撃的な事実だった。

(でも、帰らないかもしれない……。)

学園での生活にも慣れたし、彼女は元の世界を選ばないかもしれない。

「放課後、準備ができたら私の部屋まで来てください。」

断ってほしい。
帰る必要なんかないから、クロウリーの部屋には行かないと言ってほしい。

けれど、そんなアズールの願いは脆くも崩れ去った。

「わかりました。」

そう答えたヒカルの声には一切の迷いがなく、アズールの視界が暗くなった。

胸の中で、なにかが音を立てて壊れていく。

どうしようもない虚無感が襲い、今にもなにかを吐き出してしまいそう。

すべての契約書を失った時よりも遥かに大きい、絶望だった。



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