第4章 片恋コンサルテーション!【アズール】
魔法の掃除機を修理できる職人は、学園の外にある町に住んでいるらしい。
当然と言えば当然なのだが、学園の外には様々な世界が広がっているのだ。
「ヒカルさん、お願いがあるのですが……。」
「まさか、わたしに職人のところへ行けとか言いませんよね?」
「……。」
再び、沈黙がすべてを語った。
いい大人が、ふざけるんじゃない。
「わたし、学園の外には出たことがないんですけど。」
「だ、大丈夫ですよ。職人さんの店は町のメインストリートにありますし、危なくないです!」
もはや、クロウリーの中ではヒカルが職人のもとへ行くと決まっているらしい。
「迷子になったらどうするんです。学園への帰り方だってわかりませんよ。」
「ご安心を! ヒカルさんが帰る方法なら、ちゃんと用意してあります。私、優しいので!」
優しいというか、当然の義務である。
不慣れな異世界人が、迷子になった挙句、衣食住を失ったらどうしてくれる。
「帰る方法、あるんですね?」
念押しをして尋ねたら、ぼんやり光るクロウリーの目がにっこり笑う。
「ええ、特別な馬車を出してあげましょう。それに乗れば、きちんと帰れますからね。」
馬車には良い思い出がない。
が、魔法の掃除機が壊れたままなのは本当に困るので、背に腹は代えられず、不承不承な気持ちで頷いた。
学園の外へ出るのは初めてだし、考えようによってはラッキーだ。
お使いついでに異世界の町を見てみるのも楽しいだろう。
「放課後、準備ができたら私の部屋まで来てください。」
「わかりました。」
前向きになったヒカルは、放課後を楽しみにしてクロウリーと別れた。
校舎の陰に、アズールが立っていたとも知らず。