第5章 ①明治トリップ女子、最強の狙撃手に溺愛される【R15】
「おい尾形」
杉元の絞り出すような制止の声など聞こえないかのように、尾形の指先が、白磁のような和栗の肌をかすめていく。
彼女はまだ夢の続きにいるのか、尾形の胸に頬をすり寄せ、心地よさそうに柔らかな吐息を漏らした。
「ん・・・」
その吐息が尾形の首筋をなでるたび、彼の理性を繋ぎ止めていた細い糸が、じりじりと焼き切れていく。
……いい加減にしろ
尾形は奥歯を噛み締めた。
わざとなのか、相変わらず寝起きが悪いのか。
どちらにしろ内側で燻っていた暗い情動が、一気に烈火へと変わりそうになる。
自分が妙に変だ。
こんな感情になったことは和栗に会うまで無かったが、最近沸き起こる頻度が増えた気がする。
こうなると、しばらくどうして良いのか分からない。
尾形は逃げるように和栗を抱き直し、その耳元へ顔を寄せると、熱い吐息とともに低く、震える声で囁いた。
「……これ以上俺を試すな。」
……食い殺したくなる
その瞬間、尾形の瞳に宿った獲物を狙う残忍なまでの飢えた欲望。
「川の水で起こしてくる」など嘯いて、尾形は何かを言いかけた杉元を置き去りにし、まだ薄暗い森の奥へと静かに足を踏み出した。
杉元の気配が完全に消えるまで歩き、尾形は一本の巨木の根元に和栗をそっと降ろした。
だが、その腕は彼女を解放することなく、逆に木の幹との間に閉じ込めるように手をつく。
尾形は和栗の肩に額を預け、深く、深くその匂いを吸い込んだ。
「……もう、逃がさないと言ったらどうする」
そう囁く彼の唇が、首筋の脈打つ場所に触れる。
先程の呟きが冗談ではないかのように、尾形は和栗の柔肌を自らの印を刻みつけるような強さで、静かに、けれど貪欲に食んだ。
「……あっ……」
首筋に走った鋭くも熱い刺激に、和栗の口から蜜のように甘い吐息がこぼれ落ちる。
痛み、なのに胸の奥をかき乱されるような熱を帯びた快感が全身に駆け巡る。
和栗は混乱したまま、目の前の男の肩に震える指先をかけた。
「おがた……さ…なに……?」
まだまどろみの霧が晴れきっていない頭では、状況を正しく理解することができない。
思考はバラバラに霧散しているのに、肌を震わせる彼の低い呼吸と、首元を食む生々しい感触だけが暴力的なまでの現実感を持って迫ってきた。