第44章 ホークス オリジン
ジャージで通勤する羽目になった凛ちゃんはすごく不機嫌でそんな姿さえも可愛かった。
わざと嫌がるように、誰も袖を通していない“大人の口実”用のワンピースを出して空気の読めない演出をしてみたら案の定
“ぷりぷり”と怒って事務所の方へと歩いて行ってしまった。
甘い時間と少しのスパイス…
それは、本当の恋人のような瞬間だ
オレが望めば手に入る
“普通”
の幸せ
「おはようございます、よろしくお願いします」
そう言ってスタジオまで行けばスタッフが出迎えてくれる。
最近は雑誌の撮影に呼ばれることがとても増えた。
スタイリストに懸念していたことを話しかけた
「今日、予定だと脱ぎますよね?…傷だらけなんですけど大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ!敵ですか?お疲れ様です」
そう言われて、フッと鼻で笑ってしまった。
ヒーローで傷なんて言ったらそうなるよね
ヒーロースーツの羽織をパサリと脱いでハンガーにかける。インナーの上着も同様に脱げばスタイリスト気がついたように“あー”と声をあげた
「こう言う傷なんだけど…」
「ちょっと、カメラマンに確認してきます」
そう言って扉を閉めた。
鏡に映る体を見て思わず笑ってしまった
腕と背中に爪で付けられた引っ掻き傷、首からお腹にかけて間隔の空いたキスマーク
凛ちゃんなりのオレへの当て付けなんだろうなと目を細めた
「失礼します…すみません。確認してきました」
「んー…消せって?」
「そのままで、良いそうです」
「そうなの?」
いい大人が事情の証をつけて人に見られて、大人の対応をするようにそのままでいいと言われる
逆に恥ずかしくなって照れ笑いをしてしまった。
「ねぇ、恥ずかしいついでにさ、もう一つ恥ずかしいお願いしてもいいかな?」
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