【TWISTED-WONDERLAND】夢物語ヒロイン!
第7章 【真紅の暴君】後編
【Riddle side】
ボクは、ずっと……
──8年前
リドルの母
「8歳のお誕生日おめでとう、リドル」
優しく微笑むお母様が、テーブルの上に小さなケーキを置いた。
リドルの母
「今年のお誕生日ケーキは、頭が良くなるレシチンたっぷりの大豆粉とナッツの低糖質ケーキよ」
リドル
「ありがとう、ママ」
幼いボクは、お祝いされて嬉しい気持ちもあったけど、本当はガッカリしてたんだ。
リドル
「でも、あのね、ボク……一度でいいから、真っ赤な苺がたくさん乗ったタルトが食べてみたいな……」
リドルの母
「まあ、なんてことを言うの!あんな砂糖の塊みたいなお菓子、毒みたいなものよ。一切れで一日分の糖質の理想摂取量をオーバーするわ」
リドル
「………」
リドルの母
「さあ、今日は、ドコサヘキサエン酸とイコサペンタエン酸がたっぷりのヘルシーなマグロのソテーよ。ああ、でも8歳児の理想のカロリー摂取量は……1食600kcal以内だから、100g以上食べ過ぎないで。いいわね」
リドル
「……はい、ママ」
ボクは、ずっと……真っ赤な苺のタルトが食べてみたかった。
たまに通りかかるケーキ屋さんのショーウィンドウに飾ってある、宝石みたいなタルト。
◇◆◇◆◇◆
リドルの母
「本日の古典魔法の勉強はここまで。明日までに、今日の勉強に登場した魔法倫理学における言語哲学の教本を50ページ予習しておくこと」
ボクは、毎日何を食べるかも、何を学ぶかも、全てお母様に管理されていた。
リドルの母
「では、次の魔法薬学の勉強の時間まで、1時間自習にします」
リドル
「はい、お母様」
リドルの母
「お母様は少し用事があるから、また1時間後にね」
分刻みで詰め込まれる、ありとあらゆる学問。
出来なければ出来るまで延長される学習時間。
でも、これがボクの『普通』だった。