第7章 匂いに酔う【竈門 炭治郎】
炭治郎は初めてみた異国人顔の美桜に驚いた顔をしたが、いつもの天真爛漫さで目をキラキラさせて
「綺麗な目の色ですね。硝子玉みたいだ…禰豆子にも見せてあげたいなぁ」
そう言って瞳をじっと見つめる、美桜は炭治郎の赤みかがった瞳も綺麗だと思いながらしばらく見つめあっていた
その日は思っていたよりも薬草の収集に時間がかかり、麓にある美桜の家に炭治郎を連れて帰った。
「鬼殺隊ですから夜道は大丈夫です」
断る炭治郎に
「昨日イノシシの肉をもらったから鍋にしたいけど…一人で食べるのも寂しいから一緒に食べよ?」
そんな風に言われると断りも出来ず、美桜と一緒に畑で野菜をとったり、米を炊いたりお風呂に火を入れたりとこまめに働いた
久しぶりに沢山の材料を入れたシシ鍋が美味しくて美桜は「幸せだなぁ…」と何度も言っては笑う、その言葉とは反対に寂しい匂いが美桜から漂ってくる
今日楽しくても炭治郎が帰れば、話し相手は愛馬の白雪(しらゆき)しかいない生活になる。両親が亡くなった時に産屋敷からは
「美桜ちゃん…山を降りてもいいんだよ」
当時18歳だった美桜に無理をさせるつもりはないと言われた。
産屋敷輝哉のお陰で、人と接する事に多少は慣れてはいたが、町に降りる気にはなれず山にいる事を選んだ。後悔はしていないが寂しい生活である事は事実だった
湯浴みをすまし部屋に行くと、炭治郎の布団を敷いた美桜がじっと炭治郎の木箱を見ている
「……炭治郎くん…さっきから音がするの…」
鬼殺隊の為に仕事はしているが鬼を見た事は無かった美桜は初めて鬼を見た
「禰豆子は特別なんで…鬼はもっと恐くて強くて……悲しい生き物です」
そう言って頭を撫で、撫でられた禰豆子は嬉しそうに炭治郎に身を寄せる
美桜はそんな無邪気な兄妹の姿を羨ましく思った
山の暮らしが懐かしかったのか、美桜の寂しい匂いを嗅いだせいなのか頻繁に炭治郎は遊びに来るようになった
ある日、いつも背負っている木箱を蝶屋敷に置いて訪ねてきた炭治郎に、美桜はいつも通り縁側に座りお茶を出した
いつもは二人並んで座り、炭治郎のもってきた甘味を食べて色々と話をするのだが、その日の炭治郎は隣に正座をして膝を掴み赤い顔をして美桜をじっと見てからようやく口を開いた